「声優って・・・」

いよいよ、T.O.S.大川透情報局も一周年だそうです。
ここまで続いたのも、立ち上げてくださったこうしげるさんと、
後を引き継いでくれた現スタッフの方々、
そして何よりも、このサイトを利用してくださる皆さんのおかげです。
ありがとうございます。

そういえば、サイト立ち上げが、『桜の田』の稽古中でした。
今年も、新作の稽古に入るところですが、
一昨年の『新版・相続法概説』が、僕にとって、実に10年ぶりの舞台でした。

大川透は現在の声優を中心とした活動に入る前は、舞台が中心の俳優でした。
多いときは、一年で4本ぐらい出演したこともあります。
それが、ひょんなことから今の仕事に就き、それがあまりにおもしろくて、
いつしか舞台をやらなくなっていました。

皆さんは、声優というものをどういう風にとらえていますか?
声優は声だけ出せばいいから、映像や舞台の俳優より楽だと思っていませんか?
それは、とんでもない間違いです。
台詞を喋るというのは、書かれている事を、ただ声に出して話すことではありません。

人は言葉を発するときに、頭で考えた事だけを口にしているわけではないですよね。
たとえば、疲れたときに「つかれた〜」と言い、腹が立ったから“文句”がでます。
つまり、自分の体の状態や感情と、言葉は切り離せないものです。
元気な時や冷静な時だって同じ事。
同じ「こんにちは」という挨拶も、相手との関係やそのときの感情で、
いろんな言い方ができるはずです。

役者が台詞を喋る時には、その役の肉体を通した感情を再現し追体験しながら、
与えられた台詞にのせて伝えなければなりません。
体を動かすことはできないけれど、体を使ったお芝居と同じだけの力を
必要とするのです。
場合によっては、体の動きを封じられている分、よけい疲れることもあります。
つまり、マイクの前ではノイズをたてないようにするために、大きい動きができません。
激しい感情のせりふなどは、動きながらしゃべった方が
表現しやすかったりするのですが、アフレコ現場ではできない相談。
これが結構ストレスになったりもするわけです。

また、TVや映画などの映像を中心にやっている俳優さんより、
舞台の俳優さんの方が、声優のお仕事に楽に入っていける感じがします。
これは僕だけが思っていることかもしれませんが、
声の仕事でマイクの前に立って喋ることが、カメラの前で演じながら喋るより、
舞台で台詞を喋る感覚に近いような気がするのです。
映像作品に音入れしているのに、変に思われるかもしれませんね。

もちろん、一概に決めつけることはできません。
映像育ちの人でも、素晴らしい声優さんとしてやっておられる方もいるし、
舞台の人が、始めてみたけれどうまくいかなかった、なんて例もありますし。
何より、向き不向きというものがあるわけですから。

幸いにも、僕自身はこの仕事が向いていたのでしょう。
10年以上やらせてもらっているのがその証拠、といったらおこがましいかな。
そして、舞台での経験がそんな僕を支えて、今の大川透があると思っています。

その僕が、今年もまた舞台を踏みます。
昔やっていた頃に比べると、台詞の覚えが悪くなっているのは確かだし、
体力的にきついのも、日頃の不摂生のたまものと思いますが、
不思議と楽な気持ちで、稽古に臨めるのもまた確かです。

少しは大人になったのか、はたまた自分の限界がわかるようになったのか、
ただの開き直りか、思いこみか。
何にせよ、また舞台やります。
よかったら観てください。





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