「スタートレックと僕 そのさん 完結編。にしたいなぁ」

昨日は東京は雪でした。積雪なんて2年ぶりぐらいでしょうか? それで、引っ越したばかりだしちょうど休みでもあったので、スコップ買ってきて生まれて初めて雪かきなんぞしてみました。といっても雪の多い地方の方々からすると、子供の遊びにもならない程度のものです。鹿児島で育った僕は、雪かきをしなければならないほどの雪にお目にかかったことはまずありません。昨日の雪だって、どうしてもやらなければならないほどではないのですよ。翌日にはあらかた溶けてしまうし。それでもせっかくなのでやったのです。いやーそれにしても雪って重いですね。

そうそう、2年ぶりというとこのコラムも一昨年の暮れから間があいてしまいました。昨年はいろいろ大変で書く暇もなかった・・・ということにしといてください。ごめんなさい。

さて、いきなり本題突入。
いよいよ始まった「スタートレック・ディープスペースナイン」(以下DS9)ですが、必ずしも順調というわけではありませんでした。
まず、ワンシーズン分の収録が終わるたびに、次のシーズンの分の収録がまだ決定していないので、そのたびにこれで終わってしまうかもと思っていました。

海外ドラマがお好きな方はご存じと思いますが、アメリカのTVシリーズは、日本のNHKの大河ドラマのように一年通して放送されるものは、まずありません。だいたい半年放送して、あとの半年はそれを再放送するというのが通常です。そして評判が良ければ翌年に新作が半年放送されます。日本で、よくシーズン1とかイヤー2とかタイトルに付けて放送しているのはそのせいです。半年というのは、本数にしてだいたい25本前後。極端に少ないものは別にして、たいていの番組が20話から26話ぐらい制作されます。スタートレックシリーズはだいたいワンシーズンで25話くらいずつの制作でしょうか。

「宇宙大作戦」は3シーズン。その次の「新・スタートレック」はなんと7シーズンも続きました。7というのはなかなかな長寿シリーズです。半年づつ休みながらも、7年も続いたということです。なかには13シーズン続いた「ダラス」というアメリカの国民的番組や、ついにその「ダラス」を抜いて14シーズン目を放送中のおなじみ「ER」なんてお化け番組もありますが、たいていは2・3シーズンで終わります。もっても5シーズン。中にはワンシーズンもたずに10話くらいで終わってしまった寂しいものも・・・

ですから、いつアメリカでの制作が終わるか不安な場合もありますが、日本語吹き替え版の作成は2・3年おくれで始まるものが多いので、すでに向こうで終わったものか続いているのかはわかっています。ただ、向こうで続いているからといって日本語版製作が最後まで行われるなんて保証はどこにもありませんけどね。

そんな不安を抱えたままファーストシーズンの収録が終わり、何とかセカンドシーズンの収録に突入したある日、吹き替え版のディレクターが変わってしまいました。
レギュラー陣には当然変更はないものの、最初のディレクターに番レギとして入れてもらっていた私は、残念なことに番レギの役目を降ろされた格好となりました。しかし私には“エリム・ガラック”という役が残ったのは前回お話ししたとおり。

そうしてシーズンが終わるたびに、続きはどうなるのかしらという不安を抱えながらの若干のお休みをとりつつ、スタジオは4カ所変更、ディレクターも4人交代しながら、それでもやっと第5シーズンまで録り終えました。お話はまさにクライマックス。我らが宇宙ステーション・ディープスペース9が敵の手に落ち、さあ、これからどうやって仲間たちはそれを奪還するのだろう。というところでの終了です。視聴者をやきもきさせながらシーズンを終わり、次のシーズンへ興味をつなぐアメリカのTV番組の常套手段ではありますが(ちなみにこういう方法をクリフハンガーと呼ぶらしい)、とにかく続きが気になる。いろんな意味で(ファンとしても声優としてもね)。そのころには、すでに「新スタートレック」と同じ第7シーズンで大フィナーレを迎えるという情報は入っていました。否が応でもわくわくしてくるではないですか。

とにかく早く第6シーズンが始まらないかなぁ。あっ、でもアメリカの視聴者だってここで半年待っていたわけだもんな、それくらいは待ってもしかたないかな。などとのんきに思っていたら、半年たっても始まらない。あれれ、ど・どうなってるのかなと思い始めて、もう半年待ってみても何の音沙汰もない。その間も快調に収録が進んでいたのは、なんとスタートレックの次のシリーズ「スタートレック・ヴォイジャー」ですよ。実は「DS9」の第5シリーズと平行して、吹き替え版の収録が始まっていたのです。アメリカ本国では「DS9」の第6か第7と同時に放送が始まったそうなので、日本では少しだぶるのが早いことになってしまったのですが・・・。
いやいや、スタトレファンとしてはうれしいですよ。新しいシリーズを見ることができるのですから。レギュラーに入れなかったのは寂しいけれど、たまに呼んでいただければ声優としてはありがたいし。事実何度か呼んでもらったし。
「ヴォイジャー」は未知の宇宙を旅して、人類がいろんな生命体や宇宙の事象に出会いながら冒険していく物語。そう、「宇宙大作戦」のテーマを生かした、本来のスタートレックの物語と言っていいすばらしいシリーズです。ジェインウェイ艦長(STシリーズ初の女性艦長)をはじめとするクルーも全員魅力的だし、何より明るい雰囲気でとてもファンの多いシリーズです。よかったよかった。・・・・・・・・・・・で、「DS9」は?
そう、待てど暮らせど私にとって肝心の「DS9」の吹き替え作業再開のニュースが入ってこないのですよ。他のレギュラー陣とも仕事でお会いするたびに「どうなってるんだろう?何か知ってる?」「さあ、何にも聞いてないです。」と、繰り返してばかり。

そんなある日、「ちょっと業界の皆さん、びっくり仰天でっせ」というニュースが飛び込んできました。
スタートレックシリーズを制作しているアメリカ本国での親会社はパ○マウントという会社(ハリウッドの超・超メジャーな映画会社)ですが、ここの作品の日本語版制作の権利を(TVシリーズも劇場用映画もすべて)B社が独占契約したというのです。ということはです、スタートレックシリーズの日本語制作の権利もそのB社に移ることになってしまうのです。実際、このころ他社で制作していた数本のTVシリーズが、B社での制作に変わりました。変わるというのはつまり、ディレクターや翻訳者をはじめとする制作スタッフや収録スタジオが当然変わるわけです。元々の中身が変わるわけではないから、キャストさえ同じなら視聴者にしてみればたいした問題ではないのですが、我々からするとかなりの驚きです。(ちなみに現在は、この独占契約は結ばれていないようです。)

それより何より私にとって最大の関心は、「DS9」の続きはあるのかどうかです。異様な中断の長さは、水面下でそんな企業の事情もあったのだなと理解できはしましたが、何としても続きがやりたい、見たい。ファンとしては最悪、字幕ででも放送してくんないか。
・・・このころの私は、半ば自暴自棄になりつつあります・・・。

そんな中、うれしいことに「ヴォイジャー」が、制作スタッフ・スタジオはすべて新しくなりましたが、吹き替え陣のレギュラー変更なしで無事リ・スタートが決定。中断もそれほど長くならずにすんで、順調に製作が進んでいきました。

さあ、今度こそDS9だ!
どうなるDS9。やるのかDS9。いくぞーDS9!!
のお話は次号。ホントの完結編で。


・・・今度はすぐ書きます。





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